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来る様になってきた。コストも20年程前に比して1/40程度に低下し、現在太陽光発電システムのコストはkw当り100〜120万円程度に低下し、わが国を始め欧米でも国の補助により住宅用太陽光発電が普及し始めている。また、シリコンや化合物半導体(CdTe,CuInSe2,GaAsなど)を材料とした薄膜型結晶太陽電池の研究開発も進められている。これに対し製造コストの安いアモルファスシリコン太陽電池の変換効率も向上し、12%程度(10cm角)のものが大量生産出来る様になり、さらに大面積のものが開発されてきているが、未だ光劣化など信頼性の面での不安がある。
また、太陽光発電システムとしては、灯台電源や水ポンプ用の独立型システムが先行したが、最近では蓄電池を必要としない系統連系型システムが先進国を中心に急速に増加し、電力会社との電力のやり取りができ、余剰電力の売電も出来る様になってきた。しかし、太陽電池の生産量は世界で80MW程度、わが国では20MW程度と少ない。現在、わが国の太陽光発電による電力供給は約3.53kw程度と著しく少ない。
更に供給量を増やすためには、更なるコスト低下が必要であり、太陽電池の変換効率の向上と同時に屋根材や壁材と一体化した太陽電池モジュールの開発や交流出力の太陽電池モジュールの研究開発も進められている。また欧州では、太陽光発電により水を分解して水素を製造し、これを貯蔵・輸送するプロジェクトが進められている。その他、光合成プロセスの一部を利用して太陽光エネルギーを直接電力に変換するソーラーバイオ発電の研究や、特殊な藻類を利用して太陽エネルギーから水素やエタノールを製造する基礎的研究も進められている。

 

2.3 環境との共生

植物の葉は緑色をしている。これは生態系のエネルギー生産の基本が太陽エネルギーにあることの象徴である。生態系を構成する植物は、光合成によって自ら太陽エネルギーを蓄えると共に生態系のサイクルを通じて他者へのエネルギーフローを実現し見事な共生関係を維持している。
太陽エネルギーを中心とした地球のエネルギーフローを見てみよう。地球に降り注ぐ太陽のエネルギー総量は毎秒173,000TW(テラワット)。このうち、5,200TWは宇宙へ照り返される。残りの123,000TWのうち、81,000TWは熱として地表および海洋に吸収され、40,370TWが水の蒸発と気象のダイナミクスに使われる。実際に光合成として生態系に蓄えられるエネルギーは95TWとなる、これは地球が吸収するエネルギーの0.08%に過ぎない。現代人間社会が消費するエネルギーは10.5TWと言われており、人類は地球の全生態系の1割を超える規模のエネルギーを消費していることになる(ヤンツ,1980)。

 

 

 

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